建築実例データ
家族構成
施主
建物工法
木造軸組工法
土地面積
223.27㎡(67.54坪)
延床面積
90.60㎡(27.41坪)
過去から現在、未来への時間軸を感じられる庭を愛でる日常。
少しだけ遠回りして雑木の間を抜けていくアプローチ。
わずかな歩みの間に陽光を透かした葉がちらちらと揺れ、そよ風が梢を鳴らすと、緑が絶えず五感を楽しませてくれる。
県道沿いの敷地は、すぐ目の前をひっきりなしに車が行き交う。
当然ながら住まいはこの条件を考慮して設計され、外に向かってオープンでありながら内にクローズする必要もあるという難しい課題に対しては、「庭」に多くの力を借りることとなった。
作庭の軸となるのは、石積みの塀。リビングから見える位置にある途切れ目は、視線を抜いて圧迫感を和らげる役割を果たすが、手掛けた「庭やサカモト」の坂本さんの意図はそれだけではない。
あえて崩れたように石を積み、野の草を茂らせたさまから想像されるのは、年月とともに朽ちゆく遺跡の姿。
「目の前の美しさだけでなく、過去から現在、未来への時間軸を感じられる庭にしたい」と、坂本さんは語る。
一方で設計士は「家の設計は、庭の自由さにとても助けられている」と感じる。
塀の内部はアプローチや芝生のゾーンがゆるい曲線を描き、人工の直線はない。モジュールや機能にとらわれないのびやかな造形が、建築物の直線的なフォルムをやさしく包み、その美しさをいっそう引き立ててくれる。
住まいには治療院を併設。
施術台に横たわると、ちょうど目線の先の窓越しにモミジが映る。癒しを受け、庭を抜けて帰途につく患者さんに、木々たちも精いっぱいの生命力を降り注ぐ。